

大学3回生(愛媛ではこういう数詞を用いる)の前期は、俺が院を目指すと決めた時期だった
暇さえあれば自転車で大学に行き、研究室に籠り、半分くらいダラダラしながら、だいたい一人で勉強していた
ジュディス・バトラーの『アセンブリ』を何度も何度も、しわしわになるまで読んでいた
哲学、芸術学、フェミニズムの木々に分け入って、根元にもたれて眠る時間のほとんどは、
間違いなくあの研究室で過ごしている

暑い日も寒い日も涼しい日も雨の日も、誰もいない松山市の住宅地を抜けて、
壁に貼られたフェルトのような生地が発する匂いに包まれながらエレベーターで昇って、
2回左折して一番奥の部屋の鍵を開ける
パウダリーな本の匂いと、断熱性が皆無な室内の硬い温度を感じるとき、
俺は自分で自分を動かすことがやっとできたんだと、心から思っていた
明日も明後日もその先も、ここに来れば何かが起こる
長机に積み上げた本が、5000字のラフな主張に組み上がる
興味を持ってくれる友人、親身になってくれる教授
知的好奇心を満たすことだけに集中できる期間と、それが可能な心身
すべてを懐かしく思い出す
